エキセントリックの向こうに

人が人を好きになったり嫌いになったりするのはよくあることなわけだが、
自分のことをある人がどう思っているかを推測するには、ターゲットとなる人物と相対し、立ち居振る舞いを仔細に観察するしかない。
〜しかない、といっても、もちろん他人からの伝聞によって自分がどう思われているかを知る、というのもよくあることではある。
しかし、本人の心の底を正確に表現しうるのは本人だけだ、という立場にここでは立ちたい。


俺は、ジャンバラヤ動物園で「妹分」として可愛がってきた女の子に、先日来本気で思いを寄せるようになり、
それまでの気楽な付き合いから一転、彼女のあらゆる挙動に意味を求め、ちょっとしたやりとりにも緊張をするようになった。


そして過日初めて二人で食事に行った。半ば強引に誘ったのだが、同僚の女性らに励まされての行動である。
以前から俺になついている、心を許している一面を覗かせていた彼女だが、最寄駅が同じなのでまず地元まで一緒に帰ることにした。
その道すがら、少しずつおかしな方向に彼女がシフトし始めた。
冗談半分に俺の腕を取ったり、取った腕にぎゅっと身を寄せたり、二の腕に頬ぺたを押し付けてきたりするのだ。
行動はイイ感じなのだが口では悔しいだの、今だけだからだの、もう二度とないだの、俺を悲しくさせるようなことばかり言う。
それなのに言った直後に再び顔を寄せてきたりするのだ。だが先の悲しい言葉にも冗談の香りはあまりしない。
実はすごうでの演技者なのだろうか。
ただ、俺の方から手をつないだりしても嫌がらないのは、暗い場所ではあったけれども(つまり手を引いてやるという本義があったにせよ)、
実際悪く思われてはいない証拠であるとは思える。


俺の中にも幼稚ではあるが「男女間の一般論」みたいなものが一応備わっていて、
女の人が腕を取ってきたり、手をつないでも嫌がらない場合、それは、自分に多少以上、気があると考えて間違いない。
上記の行為は、男女の付き合いにおいてはかなりデカイ通過点と考えられるのだ。


しかし俺が思いを寄せる女の子は行動こそ好ましさを感じさせこそすれ、言葉や態度に注目すると、何を考えているのかよく分からない!のである。
表出されるエキセントリックの向こう側、彼女の心の芯の部分に触れることが叶うのはいつになるだろうか。
またそれは俺にとって幸福なものになるのだろうか。