読書

「告白」(町田康中央公論新社
前回読んだ時は「長いなぁ(苦笑)」が感想の大半を占めたのだが(なんせ700ページ弱あるので)、
この度の読書においては大変面白く感じた。前ほど長いとも感じなかった。


『自分と、世界と、そのほかに言葉によってできたもうひとつの世界がある。
二つの「世界」は、言葉を持つ事で抱えることになる思念によって串刺しになっている。』


前作「パンク侍、斬られて候」で、人語を解す猿をつかって語られた言葉と世界の関係。
今作では主人公の熊太郎が抱え込む暗闇の原点となっている。
頭の中に言葉が充満しているのに、うまく地元の河内弁でそれを表現することが出来ず、阿呆のように扱われる熊太郎。
ずるずると下降していく熊太郎の、最終的に行き着く先、思考と言葉と世界が直列につながったとき、
要するにチューニングが合ったとき、弥勒の世の到来、何もかも大逆転してうまくいくのかと思いきや、
それはまったく逆で、熊太郎を死に至らしめるのであった。
本当の悲劇というのはこういうのをさして言うのだろうと思った。文章は相変わらず笑える。