アルファード、四十肩、都市に生きる個人

ash20042004-08-22

長野県に発つにあたって俺がしなければならないのは自分のパンティーや目薬や非常用のコンドーム、写真集を鞄に詰め込むことよりも
何よりもまず愛するロードスターの給油と、タイヤの空気圧調整だった。
給油はエンジンがレギュラー指定であることだし普段入れてやらないハイオクガソリンを、満タンに充填してやり、
空気圧は高速道路を走行するというのでやや高めにしないといけない。教習所で習ったことを忘れていない俺は偉い。
ふふふ、ハイオク入れたしこれで高速同じペースで走れば燃焼が最適に行われてカーボンスラッジが取れてエンジンが快調になるわ、
と呟きつつGS備え付けのエア補給器をスタンドから降ろしタイヤのキャップを外してはたと気付いたのは、
俺は今まで空気圧調整というものを一度もやったことがなく、しかもメーカー指定の値も知らない、ということで、こんな所で若さを出している場合じゃない、
ないけども知らないものは知らないんだからしょうがねーじゃん、と自分で会議して、結局現状より若干圧を上げる程度にとどめた。
こんな動きを、連れと連れの荷物とその他の人員の荷物を迎えに連れの家に参上する前にとって、空気圧のところでやっぱり遅刻する流れになってしまい、
本当は洗車もしてやりたかったが、何せ大役に抜擢がされたのが前日の夕方ということもあり、やや水アカの付着したボディでの晴れ舞台となってしまった。


我々が起居する地域からだと東名高速道路を使うのが時間もかからず良かったのだけれど、
お金がもったいないので八王子までルート16で行き、そこから中央道に乗るという経路設計で行った。
このルートなら高速道路間の乗り継ぎにおける間違いは起こり得ないし、なによりほぼ半額である。


道中は昨日書いたスリップストリーム省燃費で、漫然としがちな運転を楽しみながら行うなど工夫した。
登坂車線まで付いてくるロードスターにトラッカーは何を感じただろうか。
信号がないというのは快適な反面、ハンドルから手を離したり自分でCDを入れ替えたりすることが出来ないのが辛かった。
中央道の路面はお世辞にもきれいとは言えず、ステアリングが微妙に取られることも多かったことも記しておきたい。


俺が行ったのは長野と言っても山梨との境にある山ん中で、「八ヶ岳に行くぜ」っていきなり言い渡されてたぶん長野の奥深いところだろうと勝手に決め付け、
はてなダイアリーで俺が連載している小説「チームさらし者」にも「連戦、長野」なる気取ったタイトルの一項を言われたその日にアップしていたのだけれども、
直前に町名を検索したら住所が「山梨県××」になっていたので軽く青くなった。ああ、また調子に乗って予断で書くから。
ゼミ合宿で先日長野に行ったばかりだというのに何だい、また行くのかい?ってところがポイントだったもんだから。
高速道路を降りて先導してもらいながら目的地である別荘地に入る本当に直前に、「長野県」と書かれた例の看板を後方に追いやって、俺は心底ほっとした。
小説に破綻が生じてしまうところであった。


東京が連続で真夏日を記録していた、今から少し前のこと、新聞の天気予報で長野の予想気温を数日間チェックして見ていた。
分かったのは最高気温こそ大差ないが最低気温に違いがある、長野は東京より三度から五度低く、おそらく朝とか夜涼しいんだろうなということで、
ゼミ合宿の際に体感してその予想が当たっていると結論付けて一人で喜んだ。
その別荘地で俺はテニスをしたり名物の蕎麦を食ったりアルコール貯蔵庫から随意にビールその他を取り出して飲んだりして、ちょっとしたブルジョア生活を満喫した。
テレビ電波がNHKしか入らなかったのと、なのにその別荘の持ち主である婦人らがテレビっ子で常にテレビがオンにされているのが誤算だったが、
折りしもアテネオリンピックと夏の全国高校野球NHK朝日新聞主催)を昼夜に渡ってやっていたため、
スタジオパークからこんにちは」も「難問解決!ご近所の底力」も見ずに済み、辛うじて精神の安定を保つことができた。
民放の藤原紀香みたいな鬱陶しい賑やかしもいないNHKのオリンピック中継はむしろ俺の愛国心を自然な形で解放してくれさえした。
ただ、フォークデュオ(自称)である「ゆず」が歌うテーマソングだけが。


なんで俺がゆずらを嫌っているかというとその身の売り方が気に入らないからで、
こいつら地上波の音楽番組には当初よりほとんど出ないくせに「公共広告機構」の「私たちは地球という星に生まれた」などという何の効果も期待できない電波汚しには加担、
今回も「NHKから」応援ソングで応援するなど、民放には見向きもせず、公共機関のオファーならゆずとして仕事を請けましょうみたいな「選別」を行っているフシがあるからだ。
お上が絡むと途端に貞操がゆるくなるとは、お前ら右翼かよ、なんて思うけど歌っているのは個人的な恋の歌とか生きてることって素晴らしいよね、
みたいな戦後民主主義丸出しの軟弱ソングで、戦艦大和のテーマ2004や英霊ブギなんてタイトル何処探してもない。
どっちかというとマイケル・ムーア監督とセッションしそうな感性である(おい、ブッシュ、世界を返せ!って誰のモノでもないよ随分狭い世界だな)。
おい、ゆず、アダルトビデオ出演の過去はどうなったんだよバカ野郎、と俺は、長野の人んちの別荘まで来て、考えなあかんのかい。何を言っとるんだ俺は。